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サカナトナミダ
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anryo☆がお届けする、ちょっと不思議な物語

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出会い

2009/09/09 02:19
数え切れないほどの人が、すれ違う二つの波を作り出す。
逆らおうとすれば飲み込まれそうな、圧倒的な流れ。
そして、歩みを止めている者は道の端に。

目的を持ってそこにいる者、ただなんとなく時間を潰している者。
様々でばらばらな筈なのに、そこには三つの構図がある。
もっとも今日は日曜日だから、平日より顕著にその構図が見えるのかもしれない。


小春日和のある日曜日。

人波の中で、少し窮屈そうに腕を組んで歩く男女。
時折何か話しては、互いにくるくると表情を変えている。

驚いた表情が愛らしく、何より笑顔が美しい女性は、恵である。
恵の隣には、笑うと八重歯が覗き、少し幼く見える青年。
恵の恋人の洋輔だ。

「恵、ごはんどうする?」
「んー、洋ちゃんは何食べたい?」
「俺は何でもいいよ」

他愛も無い会話。穏やかな雰囲気。
二人からは、長い時間を共有してきた絶対的な信頼と安心感が感じられる。




「近藤恵です。文学部の一年で・・・えっと、よろしくお願いします」
「恵ちゃん自己紹介みじかっっ!!そんなに緊張することないってー、俺が付いてるしー」

ムードメーカーの一人がそう言うと笑いが起こり、恵もつられて笑った。

頬を赤らめて座った恵の向かいに座っていた青年が声をかける。

「近藤さんっていうんだ、俺は理工学部の渡辺。まぁサークルだし、色々イベントもあるから楽しいと思うよ、よろしくね」
「あ、よろしくお願いします」
「俺一応先輩だし、分かんないこととかあったら言ってね」

大学のサークルの新入生歓迎会。恵と洋輔はそこで出会った。
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1.メグミ

2009/02/02 13:16
駅に着いた。
腕時計を見る。
長年愛用している、青い石が並んだ腕時計の針は、11時47分をさしていた。

「日付が変わるまでに帰れるかも」

小さく呟いて、早足で歩き出した。

彼女の名前は近藤恵。
今は小さな出版社で働いている。

長く真っ直ぐな黒髪が、家路を急ぐ恵の背中でサラサラと揺れる。
季節は冬。恵の吐く白い息が、暗闇にとけてゆく。


アパートに着いた。
慎重に階段を上って、部屋のドアの前に立つ。
鍵を探しながら、再び腕時計に目をやる。
11時56分。4日ぶりに日付が変わる前に帰れた。

「ただいまー」

綺麗に磨かれた黒いパンプスを脱ぎながら、誰にともなく言う。
静まり返った部屋の明かりを点けると、暗闇に慣れていた目が、一瞬眩しさにくらむ。
丹念に手を洗い、うがいをし、コートをハンガーに掛けて、ほっと溜め息を漏らした。

きっちりと整頓された雑貨や本棚が、恵の几帳面な性格を物語っている。
ブルーとシルバーで統一されたその部屋からは、隙も無駄も無いからか、生活感がほとんど感じられない。
恵だけの、貴重な空間。

「ただいま」

今度は、恵の視線と言葉は、何かに向けられている。さっきとは口調も違う。

部屋の一角に置かれた、1つの水槽。
6匹の色鮮やかな魚たちが、ゆったりと泳いでいる。
水槽の前にしゃがんで、微笑む。

「おなかすいたでしょ」

ティースプーンで餌をそっと流し込むと、魚たちの動きが急に慌しくなる。
恵は食い入るように水槽を見つめている。

仕事から帰って、どこよりも落ち着く場所で、魚たちに話しかけながら、その姿を眺める。
この時間が、恵の一番大好きな時間で、ふと我に返ると30分以上経っていることもある。

食欲を満たされた魚たちは、再び穏やかに泳ぎ始めた。

「さて・・・と」

部屋の時計の針は、0時35分を指している。
恵は立ち上がり、眠るための準備を始めた。





「ねぇ、あの人超かっこよくない?」
「どれ?うっわ、もしかしてモデルとか!?やばいんだけど!!」

色めきたって騒ぐ女子高生たちの視線の先。
黒いロングコートを着た長身の青年が足早に歩いている。

眠らない街の真ん中で。

青年が数メートル進むごとに、待ち伏せていたかのように、派手なスーツに身を包んだ若い男が名刺を手に声をかける。
青年は歩みを止めることなく、彼らをやり過ごしながら進んで行く。

しばらく歩くと、喧騒は徐々に遠ざかり、うって変わって閑静な住宅街が現れた。

高級そうなマンションが立ち並ぶ中、青年は真っ直ぐに一棟のマンションに向かって行く。
細身の体を屈めて、手馴れた手つきでオートロックの入り口の鍵を開ける。

無機質な機械音が静かに響き始め、エレベーターは青年を乗せて上がって行く。
次々と点滅する階数には見向きもせず、青年は物思いに耽っている・・・ように見える。


静まり返ったマンションの最上階の廊下。
その一室の前で佇む青年。

いつものように鍵を開けようとする。が、開かない。というよりむしろ、昨日まで小気味よい音をたてて鍵を受け入れていた鍵穴は、完全に違う物に変えられており、あっけなく彼を拒絶した。

だが青年は特に驚く様子もなく、手にしていた鍵を静かにポストに入れた。
ブランド物の腕時計で、日付を確認する。

「・・・2ヶ月か。お世話になりました」

そう小さく呟くと、ドアに向かって軽くお辞儀をして、青年はゆっくりと立ち去って行く。
ついさっき上がってきたままのエレベーターに乗り込み、マンションを後にした青年は、深い夜の闇の中に歩いて行った。
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プロローグ

2008/10/02 04:50
魚に想いを馳せる。

泳ぎ続けていないと、死んでしまう魚がいる。

自らの運命など、彼らは知らない。
生きるための本能が、当たり前に彼らを動かす。

でも、
もしも、

彼らが休むことなく泳ぎながら、無意識のうちに泣いているとしたら。

・・・海の水が塩からいのは、魚たちの涙のせいかも。

そんな妄想を、知識がすぐにかき消す。

レールの上を、いたって行儀良く走る長くうねった箱の中で。
私は座っているのに動いている。運ばれている。
疲れた頭の中を、とりとめの無い矛盾がぐるぐると回る。

欠伸をかみころして、瞼を閉じた。

瞼の無い魚に、想いを馳せる。
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0


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